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2008/05/09

生命時間を過ごすこと その3

小学校入学のための身体検査が学校の医務室で校医により行われることになった。私は母に手をひかれながら学校に向かった。家から2.5kmの道のりである500mも歩けば家並みはなくなり畑が連なる。右手300mには砂丘が見える。これを越えれば日本海である。学校までの道路は日本海と並行している。だから日本海からの春のやさしい海風が頬を撫でてゆくのである。菜の花畑や西瓜畑がつらなっている。母は鼻歌を歌えながら私の手を大きく振って歩いてくれた。高学年になって母の歌ってた曲は「おぼろ月夜」であったことを知った。死ぬまで忘れえぬ思い出の曲となった。

校医が私の耳を見て「これは!お母さんこの子の耳垢を見てあげなかったのですか?」母はこの子は暴れん坊で絶対嫌がるんですよ!と言っていたようだ。校医は耳垢をつまみだして母の手のひらに乗せた。母の驚いた顔をして取り出された茶色の塊を見詰めていた。耳穴がほとんど垢で塞がっていたそうである。

帰り道の音の情景は全く変わった。私は「母ちゃん海の方から聞こえる音は波の音か」

「あら!坊や聞こえなかったの 好かったわね 今度からは暴れないで耳掃除させてね暴れて鼓膜を破いたら大変なんだから」

このときの驚きは今でも鮮明に覚えているのである。母の歌声はずっと綺麗にはっきり聴こえ、だれよりも美しい声と顔をしていると思った。 

あの思い出から70年を経た私の聴覚は聞こえが悪くなり、なおかつ耳鳴りがうるさくなってきているが。脳にはこの時の音を鮮明に高音質で録音されているので嬉しい。続く

今日も20時なった 老妻からお風呂入りますかの問い もう今日も終わったな~と答えた

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コメント

<母の歌声はずっと綺麗にはっきり聴こえ、だれよりも美しい声と顔をしていると思った。>

その後は きっとお母様の膝枕で耳掃除をしていただいたのでしょうねぇ。
クオリアさんのお母様のお声が聞こえてくるようです・・・。

michikoさんコメントありがとうございました。幼児期の記憶が加齢するほどよみがえってくるので記事にしてみました。
読んでいただきありがとうございました。

耳掃除の前と後の話は、目に見えるような描写でとてもいいお話です。

クオリアさんのお話から、お母さんへの思いがとても深いことを感じましたが、ご兄弟はいらっしゃらなかったのですか。

私の母は若い時病弱で、小さいころから私は弟たちの世話や家事をしていました。もちろん母のことが大好きで大事ですが、母に対する思いがちょっと違うなあと感じました。

両親は長生きしているので、守られた子供の時代から、老いた親を守っている立場に逆転しているからかも知れません。老いても寝たきり老人にならず、自分でトイレに行き、自分で食べることができている両親に感謝です。

ようこさん コメントありがとうございました。私には5歳上の兄 8歳上の姉 私が末っ子です。夕飯時期の忙しい時には姉が私をおんぶして外で遊んでくれた夕刻の風景の思い出も大きいです。井上ひさし著「しろばんば」のプロローグにある夕方の風景と全く同じでした

幼い頃の思い出、特に母親の実家に行くのに列車に乗ったことが忘れられません。
先日仙台から帰るときに列車の最後部に乗ったら、席が空いているのに母子が後部に立っているんです。走り出したら、いちいち子供が騒ぐんですね。ほら新幹線だ。向うの人の顔が見える。速度が同じだ。アー追い越された。等等。
私も60年前を思い起こしました。

watari14さんコメントありがとうございました。成長盛りの子供は周囲の迷惑など関係なく、思ったことを大きな声で騒ぐのですよね現代はそれに対して大人がうるさいと言う人も多くいるのも困ったことです。お母さんが小さい声でねとなだめている光景によく見かけます。考えさせらます。

ようこさん追伸です 女の子から見た母親像と男の子から見た母親像は違うようですね 今お母さんお父さんを守ってあげておられる ようこさんの優しさ幸せが伝わってきます。私も寝たきりにならぬよう努力しなければといつも念じています。

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